田舎で一人暮らしをしていた91歳になる祖母が体調を崩し、認知症と体力低下が顕著になりました。
娘である母も現役で仕事をしていて、同居しても日中は祖母を一人にしてしまいます。
これを機会に、まずは母が暮らす街の介護施設を探すことになり、初めて有料老人ホームや介護施設の見学をすることになりました。
あらかじめ、介護施設に関する本や雑誌を数冊買い込んで研究をしてから、母と私で見学に行き、気に入った介護施設に入居したはずだったのですが・・・。
結果的には、約半年で退去することに決めました。今思えば、見学の時にもっと見ておけば良かったというポイントがいくつか思いつくのでご紹介します。
入居したのはデイサービスを併設したサービス付き高齢者住宅
祖母が入居したのは、略して「サ高住」と呼ばれるサービス付き高齢者住宅というものです。
公共型の特別養護老人ホームや介護老人保健施設が不足している中で、入居費が高額な民間の介護付き有料法人ホームよりも比較的安く入居できるので、最近急増しているそうです。
介護関連の雑誌や本で書かれていた「サ高住」の特徴は、「安否確認や生活相談などのサービスがついたバリアフリーの賃貸集合住宅」。
介護が必要な場合は、介護保険で外部サービスを導入する必要があると書かれていました。
トイレや着替えにも少し介助が必要になった祖母には、提供してもらえる介護サービスが不足するのでは?と心配しながらも、母が見つけてきたサ高住にとりあえず見学に行くことになりました。
そこは、2年前にできたばかりでまだ新しく、費用も他より少しお安い。
1階フロアには入居者が利用できるデイサービスが併設されていて、母の中では一押しの施設でした。
介護してもらえる安心感で満足してしまった
実際に見学に行ってみると、小さいけど新しく、部屋からの眺めも良くて、とてもアットホームな印象の施設。
施設のスタッフさんも、すれ違うたびに笑顔で挨拶してくれます。
そして責任者兼営業担当と思われる男性から応接室に通されて、まず祖母の情報の聞き取りがありました。
病歴や現在の身体能力、性格や今までの祖母の人生についてなど、たくさん質問され、しっかり把握してくれる印象でした。
その男性スタッフからは、入浴はもちろん、トイレ介助や朝夕の着替えの介助、車いす駆動や歩行の介助まで、あらゆる生活場面で施設スタッフが介助してくれると説明を受けて、「安否確認程度のサポート」だと思っていたサ高住に対する印象が変わりました。
併設されているデイサービスを利用すれば、日中は入居者みんなで過ごすことができるので、会話もできるし、運動にもなるから、入居後に身体機能がアップする人もいるとの説明でした。
その安心感からか、私たち親子はすっかり満足していました。
■実際のデイサービスの様子を見ていない
説明を受けた後、現在入居できる空き部屋をいくつか見学させてもらえるとのことで案内されました。
応接室を出た際に、廊下の突き当たりにデイサービスのフロアがあったので、母と見に行こうとすると、「お部屋はこちらですので、こちらにどうぞ~」と促され、エレベーターに乗り込み2階の居室フロアを見学することに。
チラッと見えた感じだと、施設のスタッフさんも入居者さんもたくさんいて賑やかな印象でした。
しかし、実際のデイサービスの様子をしっかり見ていなかったのです。ここが最大の後悔ポイント。
併設デイサービスの内容をしっかり見学するべきだった
実際に祖母が入居して2週間ほど経ち、祖母も施設の生活にも慣れてきて安心していたのですが、ある日祖母が「昼間はずっと椅子に座ってるだけで、何もしないで過ごしている」と母に。
実際に母が日中のデイサービスの様子を見に行くと、入居者さんはみんなテーブルに集まって椅子に座り、お昼ご飯になるまでそのまま過ごすだけ。
テレビもついていないし、提供されるレクリエーションや体操もなし。
デイサービスというのは名ばかりで、入居者さんをひとつのフロアに集めて、スタッフが見守りやすくしているという感じです・・・。
車椅子にずっと座りっぱなしになった祖母は、足が浮腫んでパンパンになるほどでした。
入居施設のスタッフさんは優しく、祖母の生活の介助は必要最低限してもらえていたのですが、1日の大半ともいえる朝から夕方まで過ごす「デイサービス」が、ただテーブルに向かって座って過ごすだけというのがとても残念でした。
■併設デイサービスと一体型のサ高住が増えている
はじめての介護施設探しで、知識も経験もない私たち家族。
あとになって、デイサービスとサ高住は、今やセットのようなもだと知りました。全国の約半数のサ高住がデイサービスを併設しているそうです。
サ高住の収益を上げるためには入居率を上げることが重要ですが、そのためにはさまざまな工夫がなされていて、サ高住に併設するデイサービスもその中のひとつ。
サ高住の住宅部門の価格を他より低く設定して、同一グループが運営するデイサービスに通ってもらうことで、その利用料で収益をあげるというのはもはや常識のようです。
ということは、介護施設検索サイトやホームページに記載されている月額料金が、他より低価格であっても、入居後のケアプランで同一グループ内の介護事業をたくさん利用するように設定された場合は、他の施設よりも高額になる可能性もあるってことですよね。
この状態を悪い意味で「囲い込みモデル」と呼ばれているらしいです。
でも一方で、入居者本人や家族としては、近距離で頻回にデイサービスに通えるし、日中は見守ってもらえる方が安心というメリットもあったりします。
こういった状況の中で、施設を選ぶ側の私たち家族が、入居者本人のために果たす役割とは何か?
まずは最低限、施設の見学をする際に、施設スタッフの人間性や雰囲気はもちろん、どのようなデイサービス(生活の介助含めて)が提供されるのか、本質を見抜くことだったのでした。
実際に体験して学んだ介護施設見学の5つのポイントとは?
現在はこの施設を退去し、同じ市内にある別のサ高住に移りました。
今回の失敗を踏まえて、新たな介護施設の見学の際には、あらゆる視点で見ることができました。
あくまでも「見学」なので、その場で見られることや聞き取れることに限界はあるかもしれません。
でも、これから介護施設を見学される方の見るべきポイントとして、少しでもご参考になればと思います。
そのポイントをいくつかご紹介します!
①併設するデイサービスがあれば実際に見る
サ高住をはじめとする有料老人ホームで併設するデイサービスがある場合は、入居スペースだけでなく、デイサービスフロアにも実際に行って見学するのをおすすめします。
お昼ご飯やおやつの時間に見学が重なってしまうと、食事場面しか見ることができず、レクリエーションやイベントなど実際に行われている状況を確認しにくいので、できればその中間の時間(11時や2時など?見学する施設に問い合わせてみるのも良い)を見学すると普段の様子が見られるかもしれません。
また、外出や行事などの最新情報の写真が壁に飾られているかどうかも、活動に積極的なデイサービスかどうかを見学で判断するポイントになるかと思います。
②他の入居者さんの雰囲気を見る
その介護施設に入居している他の方の様子を見ることも大切だと思います。自立している方が多いのか、介助を要する状態の方が多いのかで、施設全体の雰囲気が大きく違ってきます。
あくまでも個人的な意見であり、今まで施設見学をしてみて感じる印象ですが、身体的または精神的に自立している方が多い施設の方が、入居者からの意見や要望が多く出るためか、サービスがきちんとしている印象があります。
日中の自由時間に他の入居者さんが、「自由に」行動できている雰囲気があるかどうかを感じてみるのも大切です。
③整理整頓や掃除が行き届いているか見る
施設内の環境整備がきちんとされているかは、管理者の「気づく力」が表れやすいポイントだと思います。
見学したときに、取り込んだと思われる洗濯物がテーブルに置かれたままだったり、フロアの隅にホコリがたまっていたり、花や観葉植物の管理が疎かな場合は、施設全体の管理やルールがゆるいかもしれません。
④できれば現場責任者と一言お話をさせてもらう
見学の時に対応してくれるスタッフは営業が中心で、実際の現場責任者は他のスタッフが行っている場合が多いと思います。
祖母が入居した施設もそうでしたが、実際に現場を取り仕切るのは介護の主任スタッフであり、説明してくれたスタッフと少し話が食い違うこともありました。
もし可能であれば、現場の管理スタッフにも一言挨拶をして、日中の過ごし方や介助が必要になったときの対応方法などを聞き取りできると理想です。
⑤夜間の常駐スタッフは何人か?また、誰かを聞く
デイサービスが併設しているサ高住などの場合、日中はデイサービスに勤務する介護スタッフがたくさんいますが、デイサービスの時間が終われば、当然ですがスタッフはすぐ帰宅してしまいます。
サ高住はあくまでも住宅であり、夜勤スタッフ配置の人員規定や資格要件もないそうです。その施設ごとの提供するサービス体制によって、夜勤スタッフを配置するかどうか、また何人配置するか、資格を要するかなどが決められているそうなので、見学の際は各施設ごとに聞いてみると良いと思います。
まとめ
はじめての介護施設選びは、わからない事だらけです。見学するにしても、どこをどう見れば良いのか不安だと思います。
特に最近は、施設内の高齢者虐待などもニュースでよく見るようになり、見学する側としては信用できる施設なのかどうか心配になることもあります。それに合わせて、毎月かかる費用の不安もあって、施設選びはかなり難しいというのが感想です。
パンフレットやホームページの内容だけで延々と比較してみても、実際にどこも決め手に欠けて悩んでしまいがち。
予算から候補を絞り込まずに、気になる施設から、まずは見学してみることをおすすめします。
見学してみると、見学する側の目も養われてくるし、スタッフの雰囲気の良さやサービスに対する積極性なども感じ取れるようになってくると思います!